<賃貸している建物のみの譲渡> 

 事務所に初老の会社社長が訪れた。

何人もの税理士に会ったが自分の考えに添わず、納得がいかなくて不動産に強いという鳥山会計の門をくぐったとのこと。

会社は不動産の賃貸管理会社、個人でも不動産を多数お持ちで管理会社を利用しての節税策は充分に行なっているご様子。ご質問の内容の要旨は次のとおり。

① 個人の課税売上高が1,000万円に近づいており、現在空室の店舗が埋まると1,000万円を超え、消費税の課税事業者となってしまう。

② 相続税対策として、上記の空ビルを長男に建物のみ売却したいが、相談する税理士はことごとく会社に売却した方が良いという。

③ 上記の場合、会社にサブリースすることで貸家建付地21%減の適用を受けられるか?

相談する税理士はことごとく長男に建物を売却して0で貸すと使用貸借になり自用地になる為、無償返還届を提出して、借地権20%を受けるのが良いという。

④ 建物売却値段は安くしたいが何を基準にしたらいいのか?

⑤ ご自身の母親の相続の時の兄弟姉妹への配分の仕方(遺言書の書き方)

 

これに対しての当事務所の返答は

①と②について、普通は会社に建物を売却することで税率は低く抑えて、地代を安く(土地の固定資産税・都市計画税の2倍程度)設定して賃貸借することで「土地の無償返還届」を税務署に提出することにより、借地権の設定課税を回避し、相続の際は借地権を20%認めて、自用地価額から控除できることから会社に建物を売却するのですが長男に売却することで長男に家賃収入の大半をダイレクトに移譲することで会社で1世代飛ばすという間接的な支配をすることよりも画期的な相続対策兼長男の家庭援護策であると考えられます。

問題は会社の場合と異なり、長男には権利金のやりとりをしない限り借地権は発生しにくいため貸家建付地の減額がとれるのかどうか、とれるとしたらどうしたらよいのかという核心に迫ります。

殆どの税理士も知らないところですが地代のやりとりがなく使用貸借であっても土地が貸家建付地となるケースはあります。

それは父親が賃貸していた状況をそっくり引き継いでいるケースです。

相続開始時(父親の死亡の日)にその建物の賃借人が同じ条件で借りていればOKなのです。(国税庁に確認済)

但し、これは結構難しい。賃借人が入れ替わってしまうとアウトなのです。

このような事態に対応するのに会社を使うのです。そうです、会社にサブリース(一括貸し)をすればいいのです。会社がある限り、賃借人は変更しませんし、自分の会社ですから自由に出来ます。たとえ、賃借人が決まらないうちに相続になってもサブリース契約になっていて会社から家賃収入があればOKなのです。

これは父親の賃貸状況と変更がなければ実質的に変わらないから貸家建付地を認めるという“実質課税の原則”の1つと考えられます。

④の建物の売却値段については、減価償却後の帳簿価額によれば大丈夫です。

建物は原則的に値上がりしないと考えられる為、譲渡利益は0でOKです。

従って、長男に売買による登記がなされても譲渡所得の申告は不要です。

帳簿価額は長男により減価償却を続けることになります。

⑤ お母様はご高齢とのことですが、遺言書にサインはできるとのことで兄弟姉妹に中の悪い方がいらっしゃるとのこと。これは一旦、ご相談者がすべてを相談し、現金で代償金を他の兄弟姉妹に支払う「代償金」をおすすめし、後で問題が起きないように遺留分相当の現金を支払うことと“付言”にい兄弟姉妹仲良く暮らして欲しいという母親の気持ちを入れることを進言しました。

 

(注) 消費税については建物の売却代金が150万円くらいになる為、一度だけ課税売上が1,000万円を超えることとなる為、来年早々に売却をもっていき、家賃を会社を利用して減らして調整することを助言差し上げました。

相談者は大変満足され、即刻、個人・法人ともに顧問契約を依頼されました。料金も当事務所は腹八分目ですから、今までの料金より安くて喜んで頂きました。

百戦錬磨の闘う税理士、実践税理士大家の面目躍如です。